遠 出 スペースポッドは直径9フィートの球体で、推進の加速は月面上空に浮かぶくらいの力で窓のすぐ下には関節を持った2対の脚が突き出している。プールはスペースポットに乗り込むと注意深く制御装置・・小型計器パネルの最終チェックをした「外ドアを開けよ・ポッド離船はじめ」ジェットを半秒噴射させるとどれ自身の軌道をゆく独立した天体となった。長距離用のアンテナにたどりつくと、細心の注意で状況の観察をした。プールは背後から接近した、ポッドはスポットライトをつけディスカバリーの影を消すとようやく目的の装置が目に入った、AE35ユニットは4っつのナットでとめられた金属版の中にある、面倒な仕事でもなさそうだがポットの中からでは無理な作業だ。ポッドをアンテナから2フィート離して止め宇宙服に異常がないことを確かめ、ポッドの空気を排出した。ディスカバリーの外壁の手がかりをつかむと、袋から予備のAE35ユニットを取り出した。「これから装置をはずす、アンテナシステムのパワーを切ってくれ」「パワーを切った」ハルが答えた「ようし今装置を引っ張り出している」板は簡単にスロットから抜けた一分足らずで予備がその部分に収まった。パワーが回復するとき、アンテナが異常な回転をする場合を考えてゆっくりと離れた。「コントロールパワーを戻してくれ」ハル「パワーを入れた」 診 断 2人はメリーゴーランドの小さな作業場兼実験室に立っていた、AE35ユニット200%の過負荷をかけても故障予報は出ない、完全にテストをパスした。「ハルの故障予備装置が故障したってこは考えられるな」「危険はおかせない、このAE35ユニットはNGとして廃物庫の中に捨てよう、悩み事は帰ったあとでほかの連中に押し付ければいい」だが悩み事は地球からの次の送信ではじまった。「Xデルタ1・こちら管制室、2155号送信について、アルファーエコー35ユニット故障がないという報告はこちらの検査とも一致した、こちらのコンピューターを2台使ってさらにテストををおこなう結果が出たらすぐに知らせる・・・・・・・・」そのときの当直はフランク・プールだった、ハルから話はないのかと黙って待っていたがハルからの話はなかった。ポールマンはもう起きていてコピーを注いでいた。プールは不安を隠しきれない声でプールにおはようと言った、どうだい・・・「うん・・・」プールはゆっくり答えた「管制室からちょっとした爆弾宣言がでたよ、今のままでも危険はないが地球管制室に臨時に切り替える案を検討中だそうだ、プログラム分析のためにね」ハルがこの会話を聞いている一言あまさず聞いていることを2人はしっていた。 絶たれた回線 このごろではハルが予定にない発言をするとき、あらかじめわかるようになっていた。この数週間にいつのまにか彼についた癖で電子的咳払いがはいるのである、「ああ・・・・デーブ、君に報告することがある」「なんだ?」「AE35ユニットがまたおかしい」「わからんな、ハル2日で2つとも装置が駄目になってしまうことがあるかい」「不思議に思うかもしれないが、もうじき故障を起こすのは確かだ、デーブ」「故障の原因はなにだ」ハルはめずらしく長い間をおいて答えた「はっきりとはわからないな、デーブ前にいったとおりで、異常の正確な位置がつかめない」「とにかく管制室に報告してアドバイスを聞こう」と彼は問いをおいた、だが返事はなかった。地球からの連絡は通話回線とテレタイプによる通信で充分なのに、わざわざラジオ周波数帯で画像を送ってきたのは異例のことだった。プルーとボーマンは問題のこじれてきたことに気がついた「AE35ユニットの分析が終わった、故障はAE35ユニットにあるのではない・・解決策はそちらの9000を切り離して、地球管制方式に切り替える・・の交信中・突然管制官の声が消えたと同時に警報が鳴り響いた・非常事態!非常事態!「どうした?」ハル「予報したとおりAE35ユニットが故障した」「照準ディスプレイを見せてくれ」十字線から地球が外れはじめていた。「ちくしょうめ」ボーマンがいった。「ハルは正しかったわけだな」「あやまったほうがいい」「その必要はないよ」ハルが割り込んできた。「故障を喜んでいるわけではないが、私に対する信頼が戻ってくれればうれしい」「誤解して悪かった」ボーマンがいった。「それはそれとしてアンテナの手動コントロールをこちらに回してくれないか」「いま切り替えた」大変な努力は払ってアンテナを十字の方向地球に収めるのに成功した。 土星一番乗り ![]() ハルとの対話 ディスカバリー号のシステムはすべて正常に機能していた。コントロールデッキからいつ遠心機にやってきたのかおぼえがない。気がついたときはキッチンのいすに座っていた、睡眠薬の永い眠りからさめたように、彼はゆっくり周囲を意識しはじめた。正面には魚眼レンズがあった、それはハル視覚入力装置で、船内の重要な場所には必ず配置されている。ボーマンははじめてそれを見るように見つめた。そしてゆっくりと立ち上がるとレンズに近づいた。突然ハルが離しかけた「困るんだろフランクがああなってしまったんでは?」「うん」長い間をおいてボーマンは答えた」この事件できみはかなりだげきを受けているね?」「何を聞きたいんだ?」この言葉を処理するのにハルは長い時間をかけた。・・・かれは優秀な乗員だった。ポッドのコントロール装置が故障して起こったのか?それともハルの故障(ミス)なのかハルに尋ねるきにはなれなかった。今でもフランクは故意に殺されたという考えを納得できないでいた。乗務員に一人が死んだときは生き残ったものは直ちに冬眠の一人を目覚めさせ補充しなければならない。冬眠カプセルをハルの管理下から引き離し独立した装置として冬眠装置を操作することも出来るのだ、今の状況にあってはそちらのほうが好ましい感じだった。「ハル」出きる限り平静な声で彼はいった。「手動コントロールをこっちにくれ・・・・全部だ!」全部だって「ボブ」「そうだ」補充は1人だということを忘れたのかい?」「非常事態が発生したんだ手助けはいくらでも欲しい、自分でやりたいんだ手動コントロールを渡してくれ」「デーブ」君には仕事が沢山あるじゃないか私に任してくれ」「ハル・・・・「手動冬眠に切り換えろ」「オー・ケーデーブ」とハルはいった。やがてボーマンの耳に聞きとれないほどの遠いモーターの音が聞こえてきた。
真空 ボーマンは近ずく竜巻のそれに似た轟音と風が体お引っ張り始めるのを感じた。空気が船から宇宙空間の真空へ噴出しているのだ。気圧が0に下がり意識を失うまであと10秒か15秒、考える余裕はなかった、だがそこで突然設計者の1人がかれにいったことを思い出した・・・事故を防ぐシステムはできるが、故意の事故を防ぐシステムまでは無理だ!。非常退避室の黄色い標識が見えた、よろめきながら近づき転がり込んだ、その小部屋は人1人と宇宙服が1着入るだけの大きさだった。その部屋には小型の酸素ボンベが備えてあった、ボーマンは最後の力をふりしぼって手元に引いた酸素が肺にに流れ込んできた、しばらく彼はあえぎながら立ちつくしていた。酸素の噴射が終わると突然静かさが戻ってきた、船内の大気はすべて宇宙に吐き出され船内は真空になったのだ。このまま宇宙服を着なくても一時間は生きていられるが無駄に酸素を浪費してしまうだけだ、宇宙服に入り外に出た。彼は事実を見定めるために冬眠カプセルに向かった、はじめにホワイトヘッドを調べた・次いで・カミンスキー、ハンターも・・・1目見るだけで充分だった。地球との通信も途絶えた宇宙船の中で彼は1人残されたのだ。ぐずぐずはしていられない打つ手は決まっている、やがて彼は楕円形のドアにたどり着いていた、その表面にはこんな表示が言葉が書かれていた「許可なき者は立ち入りを禁ず」「H19種許可書をお持ちですか」カギは無かったが、3枚の封印がドアを止めていた。ボーマンは前に1度だけ入ったことがある、まだ備えつけ工事が始まってまのない頃だった。無数のソリッドステート論理ユニットが上下に左右にずらりと並べられたその部屋は銀行の地下金庫室にどこか似たところがあった。ハルの目が彼の存在に反応したことはすぐにわかった、船内の送信機にスイッチがはいった・・やがて聞きなれた声が聞こえてきた「ハローデーブ」「生命維持装置に何か起こったようだね、デーブ」彼は気にとめなかった論理ユニットに注意深く目を通していた、これは、かなりきわどい手術になりそうだ、ハルの動力源を切るだけの話ではない、たとえそれが出来たとしても結果は破滅だろ、彼の管理がなければこ船は金属の屍となってしまう。この病んだ、だが才気溢れる頭脳の高等中枢だけを切断し純粋に自動的な管理システムだけはさせておく、それが唯一の解答だ。はじめるぞー彼は心のなかで言った。認識フィードバックとあるラベルのある区画を固定している棒をはずすと、彼は最初の記憶版を抜き取った。「おいデーブ」とハルが言った「何をしているんだ?」苦痛を感じるんだろうか?とボーマンの頭に浮かんだ。自我補強のラベルのある小ユニットを抜きとりはじめた、やがて部屋の中は中を行き交うユニットだらけになった。何重にも重複構造のおかげでコンピューターはまだ自我を保っている。今度は自動思考パネルにとりかかった。「デーブ」とハル「君はなぜ私にこんな事をするのかわからない、君は私の心を破壊しているのだ、子どもみたいになってしまう・・・存在しなくなってしまう・・・・」「わたしはHAL9000型コンピューター製造番号3号・・・わたしはイリノイ”・・3の逆数は0.33333333333333333333333333333333・・・・・・・・・・2*2わたしの最初の先生はチャンドラ博士$&”!デイジーデイジー・・彼は最後のユニットを引き抜いた、そしてハルは永遠に沈黙した。 秘密 フロイト博士はほとんど睡眠を取っていないように見えた。太陽系のはるかな端にいる孤独な男に、自信をうえつけようと彼は最善の努力を傾けていた。「HAL9000の故障の原因は我々のほうでもおよその見当がついている、それももう今となっては、緊急の問題ではないので説明はあとに回す、ここでこの任務本当の目的を話しておかなければならない」「2年前、我々は地球外知的生物の最初の証拠を発見した」TMA1とその周囲に群がる宇宙服を着た人々の写真がうつった、大変な事件だ・・・・だがそれと俺がどう関係あるのか?「物体のもっとも驚くべき特徴は、その古さだ地質学的に300万年前の物であることを立証した。その石板が月の夜が明けるとまもなく、太陽系中に非常に強力な電波エネルギーを放出した、それと同じ頃宇宙探査機の何台かがその異常な電波を検出、飛跡を辿ることが出来た、するとその方向にピッタリに土星があった。さまざまな事実を組み合せてみるとモノリスは太陽を引き金としたある種の信号機ではないかという結論がでた。300万年も進んだ生物の動機を何十もの理論で検討してみた結果、モノリスはある種の警報装置だろう、我々はその引き金を引いてしまった・・・、それを備えつけた生物が今も存在するかどうかわからない、したがって、君の任務は発見以上のものとなる、カミンスキー以下3人のチームはその任務の為特別な訓練を受けていた。しかし君は1人でそれを成し遂げなければならない、最後に君に目標を教える、土星面に進化した生物が存在するとは考えられない、今のところは目標を第八惑星・・・ヤスペタにしぼる。ヤスペタは太陽系の中でもユニークな天体だ直径800マイル月面望遠鏡でもやっと円盤がわかるくらい小さい、だがきわめて明るい、奇妙に対称的な斑点がその片面に見られそれがTMA1となんらかの関係をもっていると考えられる。これで君は本当の目的をしったわけだ。土星の衛星で君が出会うのは善なのか悪なのか・・・・それとも、トロヤの専売も古い廃墟なのか、それすらわかってないのだ。」 |
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